悪食娘

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 何時に無い夜鷹の真剣な表情 アグリは彼の言葉をじっと待つ 「…彼女は他所から来た稀ビト。出身は知らない…が、少なくとも黒縄町の出では無い筈だ」 「…それで」 「根無し草の彼女は、人肉を喰らう稀ビト。好んだ者の肉から臓器まで食す。一つ所に留まって狩をする事が無い為、今まで誰も手が出せずにいた」  彼女はそのうちに周囲で「悪食」と呼称される様に成った 初めはヒトを喰らっていたが、飽きが来て仕舞ったのか 最近では「稀ビト」を中心とした食事が目立つ 「食事の痕が残らない程の大食らいで、役人もその存在に未だ気づいていない」 「…成る程な」  ぎゅっと アグリが拳を握る その様子を見て、夜鷹が問う 「彼女に襲われたのか?」 「…いいや。未だ」 「未だ?」  夜鷹の眉が寄る 「あいつは初めカンナを狙って襲った。前菜だと云ってな」 「…カンナ…」  聞き覚えのない名前 けれど、それを夜鷹に説明する事もなくアグリは続けた 「カンナを庇ったヒトは奴に殺された。骸をそのままに…」  悪食は桐人に興味は無かった だから彼を捨て置き、再びカンナを探してこの町を彷徨いていた けれど、悪食がカンナに辿り着く前に彼女は自ら命を絶った その事を、奴は知っている  何故ならば あの場に悪食当人もいたから 自らが目をつけていた前菜が散って行く姿を 彼女自身の目に移していたのだ
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