悪食娘

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 そう為ると 次狙われる存在は、自然と解って来る 「前菜と云われたカンナが死に、次に奴が狙って来るのは主食だ」  彼女はメインディッシュだと語っていた 先ずは前菜、その後に楽しむのが主食 その食材が 「…次奴が狩に来るのは自分だ」  アグリが低く呟く その言葉に、夜鷹の表情が険しく成った 「悪食には関わるなと忠告した筈だよ。お嬢さん」 「…ふん。向こうが勝手に目をつけて来たんだ」 「…また、面倒事になって仕舞ったね」  そう溜息を吐いた夜鷹 兎にも角にも このままでは確実にアグリは悪食の餌食に為って仕舞う そう為る前に、何か手を打たねば  夜鷹からすれば、アグリは貴重な人材 その脳には有りと凡ゆる知識が詰まっている そんな彼女をみすみす食材として狩られる訳にはいかなかった アグリ自身も、それを理解しているだろう  実際 彼はそんな彼女が柄にも無くこの裏通りに逃げ込んで来たのかと そう思って話を聞いていた 「…取り敢えず、お嬢さんの身柄はこの裏通りで、」 「は?なんの話をしている」  アグリが眉を顰めて聞き返す 「おまえまさか、自分が保護を求めて来たとでも思っているのか」 「…そのつもりだと思っていたんだが」 「…っは、馬鹿な」  嘲笑する様に彼女は笑うと、きっぱりそれを断った 「自分が此処へ来たのは悪食について知る為だ。奴の狙いがヒトなのか、それとも稀ビトに限るのか。それをはっきりさせる為であって、断じて救援を求める為では無い」  そう言い放つ彼女の語彙は強い 聞いていた夜鷹は、そんな彼女に何処と無い違和感を覚えた
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