悪食娘

66/81
前へ
/633ページ
次へ
 こうして裏通りにまで足を運び、夜鷹の元へ来たのは彼が以前忠告していた悪食について知る為 彼女に対する情報が不足している今、裏通りで聞かれる話は役に立つ筈 より的確な証言を聞くために、アグリは夜鷹を頼ったのだ 「まさかとは思うが、お嬢さん一人で彼女を捕らえるつもりか?」 「捕らえる?まさか」  くすり アグリが小さく笑う 部屋の温度が急激に下がり、彼女の纏う雰囲気が変わる 「…殺すに決まっているだろう」  そう彼女が発した瞬間 夜鷹はアグリの中にある、確固とした殺意を感じた 冷たく、氷の様に凍てついた殺気 「…無謀だ」 「さて、如何だろうな」  夜鷹の言葉をさらりと流すアグリ 「悪食は並の稀ビトじゃ無い。ヒトは愚か、腕に自信がある稀ビトですら一瞬で肉塊にされる」 「喰った分だけ強く為る、か。随分と燃費の良い事だ」 「私は真面目に話しているんだよ。お嬢さん」  真っ直ぐと見据えられるアグリ けれど、それでも彼女の意見は変わらない 「自分も真面目に聞いてる。他に何か情報は?」 「…」 「有るなら教えろ。奴を消す為に有効活用してやる」 「…」  何か 目の前にいる彼女が不自然に見える  まるで 怒りで我を忘れている様な それでも平静を装っている様な その中、何かに追い詰められている様な そんな違和感が夜鷹の中に浮かび上がる 「…お嬢さんは何をそんなに怯えているんだ?」 「…は」  突然の彼の発言に、思わず呆気にとられて仕舞うアグリ  怯えている? 自分が? 何に?  自問自答を繰り返す けれどもその答えは一向に出てこない
/633ページ

最初のコメントを投稿しよう!

137人が本棚に入れています
本棚に追加