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今朝旅立つと決めていたせいか、すんなりと起きられた。
まだ暗いなか、床のぬくもりを惜しみつつ、かなでは素足を寝台から下ろす。ふわっと足が沈む。敷物の長い毛があたたかに足の裏をくすぐる。
──ばばさまは寝ていらっしゃるかしら。
寝室をのぞいてみようかとも思ったが、よしておく。もしも起こして顔をみてしまったら、決心がにぶりそうだ。
寝巻の帯を解いて、そそくさと着替える。ひさしぶりの麻の服はごわごわした。
旅路では粗末な服装をこころがけるのがこつだと、顔見知りの少年が教えてくれた。男物を身につけるのがいいとも言うので、ほんとうは彼の服をもらおうと考えていた。それなのに、直前になって彼までが旅立つのをとめるなんて。
火桶から火をとって、鏡台の傍に灯す。鏡を見ながら黒髪を結いあげる。
迷ったが、額飾りは棚に置いたままにした。森番と揃いの翡翠の玉は、涙のかたちをしている。するりとした線を指でなぞったら、数日前の森番のことばを思いだしてしまって、いまさらながら、すこししょげた。
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