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部室中央から突如として発せられた、興奮に満ちた大声。その声に驚いたぼくたちは、揃って声の許へと目を向けた。
部屋の中央に置かれた、ひと際豪華なソファに腰掛けてた男のひと。そのひとは糸で引っ張られたかのように立ち上がると、ぼくを見据えた状態で固まってしまった。
「あはは、つかそうなるでしょ? 俺もはじめ、自分の目疑いましたもん。これだー! って、こいつ見つけたときは、マジに衝撃受けたスから」
無邪気な顔して笑う咲希先輩が、ぼくを見ながらそんなことを言う。失礼極まりのない言葉の羅列に、ぼくは怒りを通り越して感心してしまう。
ソファのまえで仁王立ちしながら、マヌケ顔で固まる新たなイケメンに対し、咲希先輩は目を覚まさせようと躍起になって声をかける。
「薫先輩、起きてください。おーい、王子ー! 戻って来てくださいって」
ぼくを見据えたまま固まるひとの名は、薫(かおる)先輩と言うらしい。王子とは愛称なのだろうか、少々疑問は残るけれど、ぼくは考えることを放棄した。
薫先輩は、咲希先輩の声に反応するかのように、遠い世界から戻ってきた。
「むッ!! いかん、おれとしたことが。あまりの逸材をまえに、思考が停止してしまったぞ」
「あはは、ですよね。ほんとこいつ、すげえっすよね! マジで完璧な素材持って生まれてきたって感じ?」
ぼくの容姿をネタにして、咲希先輩と薫先輩は言いたいことを言う。確実に褒め言葉ではないと思うけれど、気にしては負けだと自分を鼓舞する。
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