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姿勢を正して一礼したぼくは、薫先輩に自己紹介をする。
「はじめまして、ぼく一之瀬 秋良って言います。薫……先輩」
「おお、これは自己紹介が遅れてすまなかった。おれは『薫 基睦(かおる ともちか)』二十歳、三年だ。この部の部長をしている、よろしくな!」
薫先輩は、イケメンだけが放つことを許された光で以って、僕の目を大いに眩ませた。彼は咲希先輩とも伊織先輩ともまたタイプの違う、まさに王者のような存在感を放っていた。
それにしてもこのサークルって、どんな活動をしてるんだろう。ぼくは薫先輩に向き直り、疑問に思ったことを訊いてみた。
「あの……ひとつ質問良いですか? このサークルって、なにをしているんですか。イケメン部って、イケメンじゃない者からしたら、ひどく心折れるようなネーミングですよね」
「よくぞ訊いてくれた! 我が部は、この大学の伝統と栄光の誉れであり――」
「ありがとうございました。じゃあ、ぼく失礼します」
これは長丁場になると経験上から察したぼくは、傾聴もそこそこに踵を返して、ドアの許へと引き上げていった。
「待たんか! まだおれのはなしは終わってないぞ」
「いえ、有り難うございます。十分満足したので、そろそろお暇(いとま)させてもらいます」
「待ていッ!」
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