act.3 Debut on College  -秋良とメガネと大学デビュ-

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「ひどいです伊織さん。ぼくはココがぎゅって痛いのに、そんな笑わないでよ」  手で自分の心臓あたりを掴むと、伊織さんにその痛みを必死に伝える。 「んふふ、ゴメンごめん。だって嬉しかったんだから、仕方がないでしょう? でもね秋良、よく聴いて。きみに嘘はつきたくないから、正直に話すよ。 僕は秋良が初めてじゃない。他にもつき合ってきた子はいた。言っておくけれど、基睦は違うからね? 彼とは訳あって、つき合ってるフリをしていたんだ。それはまた、いつか話してあげる。 でも今はこっちが先。僕が今までにつき合ったのは七人、全員女の子だよ。でも男を好きになったのは、秋良が初めてなんだ。だからね秋良、きみは僕の初めてなんだよ」  すべてを言い終えると、伊織さんはぼくを思い切り抱きしめてくれた。ぼくも力のかぎり、彼に抱きつく。  ぼくが伊織さんの初めてだと聴いた途端、胸の痛みなど嘘みたいに消えてしまった。なんて現金なやつだと自分で呆れるけれど、にやける顔は直しようがない。 「んふふ。どうやら僕の可愛い、ヤキモチ妬きの王子さまは、機嫌が直ったみたいだね」 「はい。伊織さん大好き!」 「僕も秋良が大好きだよ」
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