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ぼくの名前は一之瀬 秋良(いちのせ あきら)十八歳。今年から、この翡翠ヶ丘大学部に通う一年生だ。
今日は散歩を兼ねて、オープンキャンパスに足を伸ばした。先月までぼくが通っていたのは、同じ学園都市内にある『私立・翡翠ヶ丘学園』て男子校。
中高一貫の男子校で、みんなエスカレーターで進級するもんだから、同じ顔ぶればっか。かく言うぼくも、周りのやつらに同じこと思われてんだろうな。 ……ぼくのこと、覚えてればだけど。
理由はいくつかあるけど、一番の理由は、ぼくが地味だからだ。実際ぼくには友達がいない。胸張って言うことじゃないけれど、それが現実。
けれど、それを寂しいなんて思ったことは、一度もない。人づき合いなんてメンドウなだけだし、ひとりなら嫌な思いもしなくて済む。
だから大学での四年間は、地味を貫いて波風を立てないと決めている。なに事もなく平和に過ご――
「おーいッ! きみー!」
……遠くから、誰かを呼び止める声がする。まさかぼくのことでは無いと思うんだけど。友達のいないぼくは、呼び止める者なんていないはず――
「ちょっとまって! そこの地味な子!」
…………おいッ!
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