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いったい誰に対して声をかけているんだろう。いやそうじゃない、十中八九ぼくのことだと……いや違う、間違いなくぼくを呼び止める声だ。だってぼく以外に地味なやつなんて、いないんだから。
呼びかける主を確かめてやろうと、ぼくは声がする方へと目を向けた。そうすると、ひとりの青年が手を振りながら、真っすぐぼくの方へと走ってくるのが目に映った。
キャンパスを過ぎゆく学生たちの間を、ぶつかることもなく巧みに避けては駆けてくる。青年は自ら発光してるかのような、稀に見ない光り輝くイケメンだった。
明らかに他の男子生徒よりも一線を画した、見目麗しい青年だったんだ。正直言うと、ぼくが一番関わりたくないタイプだ。
思い返してみると、高校でも見目麗しいイケメンの双子が――
「おいって! 無視すんなよ。つか、聞こえてんだろ? さっき俺と目が合ったじゃんか」
ぼくの心のナレーションを中断させる、光り輝くイケメンがぼくに非難を口にする。極力関わりたくはないけれど、疎通が成立してしまっては仕方がない。
素気無い態度を取るぼくに対し、口を尖らせながらも会話を求めるイケメンに、ぼくは小さなため息をつきながら返事を返した。
「ごめんなさい。ぼくのことだとは思わなくて」
「なんだ、そっか。てっきり俺は無視されてんのかと思ってさ、地味にショック受けてたんだ。それにさ、そろそろ違う方向性も考えはじめたりしてよ」
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