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突飛なことでも想像していたのか、彼はそう言うと頭に手をまわして、自分の発言を無邪気に笑い飛ばした。だけど違う方向性って、いったい彼はどんな想像をしてたというんだ。
ぼくはそれが気になって、つい口を衝いて出てしまった。
「それって、どういった方向性ですか?」
「何なに、気になる? いやさあ、いくら呼んでもノーリアクションだったからよ、もしかすっと幽霊なんじゃね? とか思ったわけ」
何を言い出すかと思えば……真面目に聞いて損をしてしまった。昼間から幽霊だとか、驚きを通り越したぼくは、呆れてしまって彼に半眼を向けてしまう。
どうリアクションしていいのか分からず、ぼくはただ思ったことを素直に口にした。
「もしかして、それ本気ですか? 昼間っから幽霊が出るなんて……いや、まず幽霊なんて、そんなのいるわけ……ない? と思います」
「なんだよそれ、なんで疑問形なんだよ。おもしれえやつだな、おまえって。しかも地味だしな。取り敢えずおまえはビンゴだ、探し人発見ってか?」
イケメンというのは笑うと更にイケメンなんだと、屈託のない彼の笑顔を見てぼくはそう確信した。それにしても彼の言う『ビンゴ』とはなんなのか、それに『探し人』というくだりも気になる。
頭で彼の言葉を反復していると、無邪気に笑う彼がすっと手を伸ばし、ぼくに握手を求めてきた。どうにも気恥ずかしくはあったけれど、その手を取ってぼくは握手に応じた。
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