第1話 あっ俺才能無いわ

3/4
前へ
/9ページ
次へ
一瞬の出来事だった、傷心中の俺のすぐ横の木がものすごい音と衝撃で消滅する。 「なぁ・・何?」 間抜けな反応をする俺の前に、巨大な熊のようなモンスターが姿を表す。 「グォオオオオオ」 体長5mくらいだろうか・・・立ち上がるともっとでかそうだ・・・ 「なんでこんなところにこんな高レベルなモンスターが・・・」 やばい・・死ぬ・・・死んでしまう・・・ 逃げなきゃ・・・ 必死に逃げようとするが腰が抜けて動けない! もうだめだ・・俺はここで死んでしまうんだ・・・ 嫌だ死にたくない!誰か誰か助けて・・・ 熊のようなモンスターは容赦なく、俺に向かってその鋭く巨大な爪を振りかざす! バッシュ! 死を覚悟した瞬間、鋭い音とともにモンスターの巨大な爪は腕ごと吹き飛ぶ! 「グッウオォオオ」 バシュシュ!! 凄まじい一撃が、今度は立ち上がり攻撃態勢になったモンスターのクビを飛ばす。 「大丈夫かい?」 腰が抜け、間抜けな格好で硬直している俺に、一人の騎士風の男が声をかけてくる。 「なんとか・・・大丈夫です・・」 そう返事すると、安心したのか俺はその場で崩れ落ち、なぜか涙が溢れ出してくる。 男はそんな俺を見て、少し慌てた感じで。 「あっちょっと君?どうしたの?」 「そうか・・・もう冒険者をやっていく自信がなくなったか」 焚き火を囲み、男が入れてくれた炭豆茶(コーヒー)を飲みながら俺は頷く。 男は火を焼べながら静かに語り出した。 「昔一人の冒険者がいた」 「そいつは何をやってもダメな奴でね、いつもパーティーの足を引っ張ってばかりだったんだ」 「そいつも君みたいに、冒険者をやっていく自信がなくなってな」 「もう田舎に帰ろうと思っていた時に、仲間の一人に言われたんだ」 「お前の入れる炭豆茶(コーヒー)は世界一美味い、これを飲むともうちょい頑張ろうって、思えてくるって」 「たかが炭豆茶(コーヒー)の入れ方を褒められただけだったが、その男は小さい自信をつけた」 「そしてそれをきっかけに変わることができたんだよ」 俺は男の入れてくれた炭豆茶(コーヒー)と男を交互に見てこう言った。 「その男はあなたのことなんですね、えーとお名前聞いてませんでしたね」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加