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一瞬の出来事だった、傷心中の俺のすぐ横の木がものすごい音と衝撃で消滅する。
「なぁ・・何?」
間抜けな反応をする俺の前に、巨大な熊のようなモンスターが姿を表す。
「グォオオオオオ」
体長5mくらいだろうか・・・立ち上がるともっとでかそうだ・・・
「なんでこんなところにこんな高レベルなモンスターが・・・」
やばい・・死ぬ・・・死んでしまう・・・
逃げなきゃ・・・
必死に逃げようとするが腰が抜けて動けない!
もうだめだ・・俺はここで死んでしまうんだ・・・
嫌だ死にたくない!誰か誰か助けて・・・
熊のようなモンスターは容赦なく、俺に向かってその鋭く巨大な爪を振りかざす!
バッシュ!
死を覚悟した瞬間、鋭い音とともにモンスターの巨大な爪は腕ごと吹き飛ぶ!
「グッウオォオオ」
バシュシュ!!
凄まじい一撃が、今度は立ち上がり攻撃態勢になったモンスターのクビを飛ばす。
「大丈夫かい?」
腰が抜け、間抜けな格好で硬直している俺に、一人の騎士風の男が声をかけてくる。
「なんとか・・・大丈夫です・・」
そう返事すると、安心したのか俺はその場で崩れ落ち、なぜか涙が溢れ出してくる。
男はそんな俺を見て、少し慌てた感じで。
「あっちょっと君?どうしたの?」
「そうか・・・もう冒険者をやっていく自信がなくなったか」
焚き火を囲み、男が入れてくれた炭豆茶を飲みながら俺は頷く。
男は火を焼べながら静かに語り出した。
「昔一人の冒険者がいた」
「そいつは何をやってもダメな奴でね、いつもパーティーの足を引っ張ってばかりだったんだ」
「そいつも君みたいに、冒険者をやっていく自信がなくなってな」
「もう田舎に帰ろうと思っていた時に、仲間の一人に言われたんだ」
「お前の入れる炭豆茶は世界一美味い、これを飲むともうちょい頑張ろうって、思えてくるって」
「たかが炭豆茶の入れ方を褒められただけだったが、その男は小さい自信をつけた」
「そしてそれをきっかけに変わることができたんだよ」
俺は男の入れてくれた炭豆茶と男を交互に見てこう言った。
「その男はあなたのことなんですね、えーとお名前聞いてませんでしたね」
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