織姫に願いを

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 じんわりと汗が滲むような初夏の夜、たくさんの短冊がヒラヒラと踊っている橋に、私は一人立っていた。  都会の喧騒とはかけ離れた河原、宝石をちりばめたような満天の星空。一人でなければどれだけ心踊っていただろうか。  ──しかし、夜よりも暗い川を一人で眺める私の心は曇天模様。天の川どころか、一等星すら瞬いていない。 「やっぱり、期待しすぎたかな…」  どこか遠くで唸っている滝の音に耳を傾けていると、ポツリとそんな言葉が漏れた。  そのままぼうっとしていると、どこからか一匹の蜻蛉が飛んできた。日の光の下であれば透き通っているであろう彼の羽は、橋の下を流れる川と同じく、黒に塗りつぶされている。  あなたも私と同じなの?  そう問おうとしたが、もう一匹の蜻蛉が現れ二匹仲良く飛んでいってしまい、私の言葉は喉を出ることはなかった。  ……もう今日は帰ろう。この時間になっても来ないということは、諦めた方がよさそうだ。  じわっと目頭が熱くなるのに気づかないふりをして、私は独り、歩き出した。  
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