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顔を上げた彼は何かを言いかけ、ふとどこかを見て閉口した。
「あ、蜻蛉…」
彼の視線を追うと、その先には二匹の蜻蛉がいた。仲良く踊る蜻蛉の羽は星の明かりに照らされ、透き通っている。
「綺麗…」
星空の下、小さな命が踊っている様はとても幻想的で、私は心を奪われる。
これが見れただけでも、今日は十分だ。祭りなんてどうでもいい。彼と二人でいるこの時間の方がよほど幸せだ。
気づくと私の頬には一筋の雫が垂れていた。
「星香」
名前を呼ばれ、彼の方を振り向く。
「いきなりで驚くかもしれないけど、どうしても言いたかったことがあるんだ」
何かを決意した彼の表情はいつも以上に凛としており、瞳には星が輝いている。
「実は俺……お前のことが──」
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