開店準備室 カコ

6/7
前へ
/227ページ
次へ
「山内さんー、高校生、大丈夫?」 「まあ、オープニングの3ヵ月だけだし、大丈~夫じゃない?」 「はーい。じゃあ、 次に来る日は、又、連絡しますね。」 「はい、じゃあ、そう言うことで、よろしく~」 ニコニコ顔で ヒラヒラと手を振り、 2つづつ相向かいに4つ並べてある、奥のデスクへ戻っていく。 ―――えっ? ・・・採用? って、ことだよね?? 「あ、りがとう ございます!よろしくお願いします!」 あわてて、ガバッと、90度のお辞儀をして、 顔を上げたときには、 もう、山内さんは、 デスクチェアから身をのりだし ぶつぶつ言いながら パソコンを食い入るように見つめていた。 「お疲れさまー」 艶々のピンクベージュのネイルに ラインストーンがキラリと光る細い指で、 さらさらのブラウンヘアーを撫でるように鋤きながら、 フワリと胸元に落とす。 「あっ、アリガトウゴザイマシタ!」 ふわっと甘いフローラルの香りを振りまきながら遠ざかる後ろ姿に 深々とお辞儀をする。 顔を上げると目の前には、白いシャツ。 ふいに見上げると、 また、 バチッと絡む、 射るように見下ろす 黒目がちな視線。 !わ「おっ ! つかれさまです!」 ペコッとお辞儀をして踵をかえし、クイッとメガネを直しながら、玄関に続く扉を開ける。 もう一度室内に向き直り、 軽く頭を下げながら挨拶する。 「失礼しま」「お疲れ、しおちゃん。」「ス・・・」 パタンと閉まるドアの隙間から ソフトな低音ボイスが響いた。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加