お墓に眠るもの

7/7
前へ
/7ページ
次へ
「はい」 顔を伏せ、震えながら答えるしかない。 「うむ。 さて、主は生前、目立った悪いことはしておらぬ。 が、それは"主の名前"の人物である」 「はい。 私は、双子の弟を殺害し、長きに渡り、弟に成り代わって生きてきました」 「と、なれば、その罪を償わねばならぬ。 実の弟を殺害し、長年に渡り成り済ましていたその罪は極めて重い。 また……」 長々とした話を 最後まで聞くまでもない。 しょせん、偽者の末路など決まっている。 もし、弟を羨むことなく、素直に祝福出来ていたならば、どうなっていただろうか? 成り代わって過ごした日々は楽しくもあったが、酷く空虚でもあった。 何をどうみても、しょせんは他人事にしかなり得ない悲しい日々。 弟に成り済ますことは出来ても、弟に成りきる事は不可能だ。 辛くとも、自分の名前で生きていれば、もっと笑うことも出来ただろうか? もはや、今となっては、わからぬか。 「~~ゆえに、主の判決は阿鼻地獄いきとする」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加