7人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
泣いた青鬼
人里離れた山道。
そこに小さな洞穴があった。
その洞穴に、青鬼がひとり住んでいた。
何百年もそこに居て、昔は他にも鬼が居た。
しかし少しづつ、仲間は姿を消した。
ただの山だったのが、時と共ににんげんが周りをうろつくようになったのだ。
はじめは弱かったにんげんは、少しづつ数を増やし、いつの頃か鬼たちを討伐しようと試みるようになった。
そのため、別の土地へ逃げた者、にんげんに討たれたもの、様々な理由で鬼たちは姿を消した。
仲の良かった黒鬼も、10年前に旅に出てしまった。
残されたのは青鬼ひとり。
ひとりになった青鬼はじっとしていた。人など襲わない。怖がるなら、隠れていよう。そう思っていた。
しかし、ここ何日か洞穴の周りに松明が焚かれ、にんげんが青鬼を討とうと集まってきた。
滅びゆく運命なのか。
このまま大人しくしていても、存在が脅威なのか。
青鬼は、深い洞穴から這い出た。
見張りのにんげんが、慌てふためき逃げていく。
にんげんの見えないところに行こう。
どこに居てもひとりなら、もう失うものもない。
だから、旅に出た。
最初のコメントを投稿しよう!