泣いた青鬼

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ーーーーーー 山の小屋に戻り、青鬼はタキを正面に座らせた。 「おめの目を、見えるようにしてやる。 そのかわり、俺を見て泣かんでくれ。タキが嫌なら、俺はおめの前から消えるから」 小さなタキの左の目玉を、青鬼は取り出した。そして、タキの父親の目玉をはめこむ。 「……痛くねえか?」 心配する青鬼にこくんとうなづき、タキは押し込まれた目玉をしばらく押さえていた。 「……ゴンベは、おになのか?」 「……そうだ」 「なして、おらを助けてくれただ?」 「……わかんね。ただ、おめが泣いてたから」 タキが手を外し、ゆっくりと頭を上げた。 朝告げ鳥が鳴き、小屋の中に生まれたばかりの朝の陽が射しこむ。 ぼやけた視界がだんだんと鮮明になっていったタキの目の前に座るのは、藍色の肌を持つ鬼だった。 「……ゴンベ?」 タキの問いに、泣きそうな面をした青鬼はコクリとうなづく。 大きな体を縮こませ、タキがどう思ったのか目を合わせず恐々と雰囲気で伺っている。 タキは腕を青鬼へと伸ばした。 目は見えている。だけど、わざとタキは言う。 「……ゴンベ? どこだ?」
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