泣いた青鬼

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「見えねえのか? やっぱダメだったか? 俺はここだ」 タキの小さな手に、青鬼は慌てて自分の指を添えた。その瞬間タキと目が合い、タキは青鬼をはっきりと見て笑った。 「ゴンベ、青鬼だったのかぁ」 「……見えるのか?」 「鬼だども、怖くねえな」 「目玉、痛くねえか?」 「やっぱ、優しい顔しとる。おらに“顔見て泣くな”って言ったのに、おめがそんな泣かねえでくれ」 タキはそう笑うが、青鬼の目からでる大粒の涙は、なかなか止まらなかった。 「タキよ、おめ、どうする?」 「なにがだ?」 「……お、俺が鬼だって分かっても、大丈夫なのか」 「ゴンベ、おらを喰うか?」 「喰わん」 「じゃあ平気だ」 タキは立ち上がり、戸板を開けて朝陽を浴びた。 朝靄が、山の空気をしっとりと包む。 「きれいだなあ。見えるようになって、おら嬉しい」
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