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タキは自分の足元に視線を落とした。
その足の間に、真っ白な蕾をつけた花の芽が伸びている。
「こんなところに花があるのも、今まで知らんかった。今までゴンベがつれてってくれたとこも、これからはよう見えるんだな」
タキの笑顔が嬉しい。
目が見えると笑う顔が、自分と暮らしていたのが鬼だと分かっても、変わらぬ笑顔を向けてくれることが、嬉しい。
青鬼は、これからタキが2度と泣かぬよう、この小さなにんげんをずっと守ろうと決意した。
「ゴンベ」
タキがまっすぐこちらを向いて、小さな手を差し出した。
それは目が見えぬ時と同じ仕草だが、今度はちゃんと見つめている。
大事な、大事なにんげん。
タキからもらったこの感情に戸惑いながらも青鬼は指を差し出した、その時。
タキの体が後ろから押されるように大きく跳ねた。
「タキ!?」
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