泣いた青鬼

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「ゴンベ……どこ……?」 タキが弱々しく青鬼を呼ぶ。 身体をぶるぶると震わせ、みるみるうちに肌の血の気が抜けていく。 「タキ! しっかりせえ!」 にんげん達の怒濤の声にのまれた青鬼の声はタキに届いただろうか。 タキの目から涙が一筋滑り落ちたと同時に、タキの手が、青鬼の指より力なく血溜まりに落ちた。 「タキ? タキ!!」 にんげんたちが青鬼へと竹槍を次々と放っていく。 体の痛みなど。 タキの心の痛みに比べたら、大したものではない。 目の前の瀕死のタキよりも、にんげんたちは鬼殺しを優先させる。……その顔は、まるで鬼の様。 青鬼が、低く呻いた。 その声は徐々に大きな咆哮となり、山を、空気を震わせた。 大波のうねりのように、唐突な旋風のように、遠雷の轟のように。
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