泣いた青鬼

2/19
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
鬼の足の一歩は大きい。 風に乗ってスイスイと山を越えた。 青鬼に行くあてなどない。 にんげんたちに見つからずに住める場所を探す旅だ。 どれほど歩いただろうか。 山の中に、ポツンと小屋が見つかった。 にんげんの気配はない。 青鬼はここに住むことを決めた。 前の住処より、ほんの少し広い。 だけど、若干床板がしなる。腐っている箇所があるのだ。それでも、洞穴よりは快適だ。 そこは明日直そう。 青鬼は板間に寝転がった。 ……黒鬼は、元気だろうか。 動きを止めた途端、そんなことを考えた。 散り散りになった鬼たちは、生きているのだろうか。ひょっとして、にんげんに見つかって…… ……大丈夫。きっと、大丈夫。 青鬼は自分に言い聞かせ、目を瞑った。 何百年も一人だ。黒鬼とはほんの100年だけだ。また1人に戻っただけ。大したことはない。 山の中は案外賑やかだ。 梟の鳴き声に、狼達の遠吠え。鹿が角を木に擦り付ける音。 ……その中で、ふさわしくない音が聞こえた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!