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鬼の足の一歩は大きい。
風に乗ってスイスイと山を越えた。
青鬼に行くあてなどない。
にんげんたちに見つからずに住める場所を探す旅だ。
どれほど歩いただろうか。
山の中に、ポツンと小屋が見つかった。
にんげんの気配はない。
青鬼はここに住むことを決めた。
前の住処より、ほんの少し広い。
だけど、若干床板がしなる。腐っている箇所があるのだ。それでも、洞穴よりは快適だ。
そこは明日直そう。
青鬼は板間に寝転がった。
……黒鬼は、元気だろうか。
動きを止めた途端、そんなことを考えた。
散り散りになった鬼たちは、生きているのだろうか。ひょっとして、にんげんに見つかって……
……大丈夫。きっと、大丈夫。
青鬼は自分に言い聞かせ、目を瞑った。
何百年も一人だ。黒鬼とはほんの100年だけだ。また1人に戻っただけ。大したことはない。
山の中は案外賑やかだ。
梟の鳴き声に、狼達の遠吠え。鹿が角を木に擦り付ける音。
……その中で、ふさわしくない音が聞こえた。
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