7人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
あーん あーん あーん……
「にんげんの子供……?」
青鬼は体を起こし、耳を澄ました。
やはり、泣き声が聞こえる。
戸板を開け、外に出ると、獣たちは一斉にその場を離れた。自分たちより強い青鬼が分かるのだ。
しかし、件の泣き声は同じ場所に留まったまま。
暗闇を歩くと、泣き声は近くなった。
そして、大きな赤松の根元に、声の主は居た。
「やはり、にんげんだ……」
赤松の下で小さな体を更に小さく丸めた、にんげんの幼女がそこに居た。巨躯の青鬼から見れば、その大きさは野うさぎのよう。
泣き疲れたのか、青鬼が着いた時には弱々しい泣き声を引きずりながら、眠りに落ちていた。
さて、どうしよう。
ここに捨て置けば、狼の群れに見つかるだろう。
さりとて連れて帰れば鬼の姿を見て泣き叫ぶだろう。
青鬼はしばらく悩んだが、狼の遠吠えが山中に響きわたった。にんげんの子供の匂いが風に乗って狼の元へ行ったのだ。青鬼がここを離れたら、この子はすぐに食われてしまう。そうすればまたにんげんが森の獣を殺しに、集団でやってくるやもしれん。
青鬼は仕方なしに、両手で子供をすくって小屋に連れ帰った。
最初のコメントを投稿しよう!