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「……ゴンベ? どこ、行っただ?」
板戸の影から、タキが顔を出した。
隣に青鬼が居ないと気付き、目を覚ましてしまったようだ。青鬼を探そうと、タキの小さな手が宙を彷徨う。
「ここだ。俺はここに居る」
自分の指を差し出し、タキの手に添えてやった。キュッと掴むその手は、青鬼の心まで優しく掴む。
青鬼は、そのまま優しくタキを持ち上げて肩へと担いだ。
「……タキよぉ、おめ、おとうとおかあの顔を覚えてっか」
「覚えとる。おとうもおかあも、にいちゃんもねえちゃんも、覚えとる。めめが見えたら、すぐ分かる」
「目ぇが、見えるようになりてぇか?」
「なりてえ」
「そうか……」
夜風に吹かれて、タキが心地よさそうに目を細めた。月夜を浴びるタキは目が見えないのが嘘のようだ。
見えるようにしてやりたい。
しかしそしたら、タキは俺を見て……
「……めめが見えたら、ゴンベの顔も見られるのにな」
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