泣いた青鬼

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泣いた青鬼

人里離れた山道。 そこに小さな洞穴があった。 その洞穴に、青鬼がひとり住んでいた。 何百年もそこに居て、昔は他にも鬼が居た。 しかし少しづつ、仲間は姿を消した。 ただの山だったのが、時と共ににんげんが周りをうろつくようになったのだ。 はじめは弱かったにんげんは、少しづつ数を増やし、いつの頃か鬼たちを討伐しようと試みるようになった。 そのため、別の土地へ逃げた者、にんげんに討たれたもの、様々な理由で鬼たちは姿を消した。 仲の良かった黒鬼も、10年前に旅に出てしまった。 残されたのは青鬼ひとり。 ひとりになった青鬼はじっとしていた。人など襲わない。怖がるなら、隠れていよう。そう思っていた。 しかし、ここ何日か洞穴の周りに松明が焚かれ、にんげんが青鬼を討とうと集まってきた。 滅びゆく運命なのか。 このまま大人しくしていても、存在が脅威なのか。 青鬼は、深い洞穴から這い出た。 見張りのにんげんが、慌てふためき逃げていく。 にんげんの見えないところに行こう。 どこに居てもひとりなら、もう失うものもない。 だから、旅に出た。
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