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次々とやってくる捜査車両。
刑事たちの中で、頭一つ抜けた、姿勢の良い男を、聡の目は、すぐに見つけていた。
そうだ。神原が僕に気付くより、ずっと先に。
――僕は気づいていた、彼に。
二度と、神原の姿を見ることはないだろうと。
そう思っていた。三年前は。
「まいったな……」
聡の口から、知らず、溜息を纏った呟きが洩れる。
そして眼鏡を外すと、聡は目頭を指で押さえながら、静かに、深く俯いた。
*
もう一度、一課の刑事に、通報から遺体発見時までの状況を説明して、聡はやっと、その場から解放された。
僕が本庁にいた頃には、この刑事、まだ一課に配属されていなかったよな……。
岩代を見ながら、聡は、そんな風に考えを巡らせていた。
すると岩代が、去り際に、「鮎川……さんって、前、本庁の鑑識にいたって、坂崎係長から聴いたんですけど」と訊ねてきた。
ごくさりげない風の問いかけだったが、聡は、そこに隠されてる毒々しいほどの好奇心を、しっかりと感じ取る。
――ああ、そういえば。よくいたな、警察には……こういう「ゴシップ屋」が。
かつて属していた組織の、いやらしいような「組織らしさ」を思い出し、聡は「ええ、以前に」とだけ、短く応じた。
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