2人が本棚に入れています
本棚に追加
皆様。暑い中如何お過ごしで御座いましょう。
わたくしは旅館の女将を務めさせて頂いておりますタマコノマエと申します、猫又で御座います。
本日は七夕と言うことで御座いまして旅館の方は休業とし、わたくしは人間様の世界の七夕祭りに参加しております。
七夕と申しますと人間の皆様は笹の葉の短冊に様々な願い事をされておられるのを拝見致しました。
『彼女が欲しい』頑張ってくださいまし。
『恋人募集中!』集めておられるんでしょうか?
『東大合格』勉強熱心ですね。
『給料上げろ』これはもしや...
『休みを増やせ』旅館の従業員でございましょうか?
厭々、旅館の従業員の願い事は皆一律に『人間になりたい』で御座いましたから、きっと違う旅館の従業員で御座いましょう。かくいうわたくしもそう書いた一匹で御座いますが。
それが叶って、八日の零時までは人間でいられるように牽牛さんと織姫さんに取り計らって頂き、浴衣も折角のおでーとなんだからお洒落なさいなと織姫さんが織って下さいました。
白を基調とした生地に紫色の朝顔模様が綺麗な浴衣でございますが。似合いますでしょうか。
「サトリ様。早くなさらないと花火が始まってしまいますよ。一緒に観ようと約束したでは御座いません事?」
わたくしは橋の後ろに並ぶ売店にて食べ物を物色為さるサトリ様にお声をかけました。根っこが猿だから色気より食気なのは仕方ありませんが。
「そんな事はないさタマコ女将、何時も綺麗だけど今日は一段と綺麗だよ」
御言葉は大変嬉しゅう御座いますものの、サトリ様は相手の気持ちを読む妖怪なので、
「読みましたわね?」
最初のコメントを投稿しよう!