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「天の川、綺麗だね」
「ああ」
僕が、そう答えると、夕夏は悲しげに目を細める。
「織姫と彦星は、年に一度しか会えないって言うけど。一度でも会えるならいいじゃない……。だって、貴明とは、もう二度と会えない……」
そう言った夕夏の頬に、雨の滴のような涙が零れ落ちた。
……会えてるよ、夕夏。
君には見えなくても。
君が短冊に、僕に会いたいって書いてくれたから。
「貴明……?」
不意に、夕夏が後ろを振り返る。
涼やかな夜風が、僕らの間を吹き抜けた。
夕夏。
君がもっと大人になっても。
いつか、僕とは違う誰かと結婚しても。
ずっと君を守り続ける。
あの天の川の向こうに広がる、
果てない空の上から……。
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