ワンパスタ

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プレゼントを貰ったというだけで、死にそうになった事も射殺されたシーンも一瞬で吹き飛んだ自分が恐ろしい位だ。 鍵を開けるとドタドタドタと足音が聞こえ、お土産を期待した母が手ぐすねを引いて待ち構えていた。 「おかえり、わっ水ようかんだ!」 スキップしながら冷蔵庫に向かい、定位置に戻るようにソファにゴロンとなると、テレビは時代劇の立ち回りのシーンで、母の目は釘付けになっている。 華麗な刀捌きで敵を斬っていき、最後の一人が倒されると主役にカメラが寄っていく。 「イナリ、始まるよ!」 母が手招きするとタタッと膝の上に乗り「どうだ参ったか!」と主役のセリフと同時に母とイナリも顔を真似ていた。 「あ――っ、それかぁ、ドヤ顔!」 いつも見ている時代劇の主人公のつもりになっていたらしい。 「あのさ、マジで変な事ばっかり教えるの止めて!」 妹が母に怒るとイナリも気に入ってると、いつものように反抗している。 「今日は気晴らしに、安くて美味しい宅配寿司でも頼もうか」 何の気晴らしかよく分からないが、ウチのごちそうと言えば焼肉か回る寿司なので、もしかすると『生還祝い』のつもりかもしれない。 「ヤッター、イナリ今日はお寿司だよ~!」 母の声が部屋中に響き、リーダー達の階に聞こえないかビクビクしながら苦笑いをした。 (完)
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