ワンパスタ

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ワンパスタ

犬人間の入るのは王様みたいなお風呂らしいが、犬というだけで無条件で優遇されるシステムは凄いけど、お風呂位はひっそりと満喫したい。 「犬専用はソフトクリームと飲み物とかフルーツも選びたい放題だけ……」 「犬に行きます!」 妹が即座に手をあげたので渋々そうする事になると、木村さんは水着とスプレーと着替えを準備してくれ、ドキドキしながらお風呂に向かった。 ここは各階に大浴場が設置されている温泉三昧のシーサイドホテルで、水着を着用して入浴するスタイルのようだ。 そのまま各階を移動するのも自由だし、犬人間と犬とその他という具合に細かくエリアも分けてある。 犬同伴だと犬専用のエリアにも入れるみたいだが、パンフレットを見てもイマイチよく分からず、通路で立ち止まり説明書きを読んでいた。 「お困りですか?」 振り返ると秋月さん親子と大きな犬が一匹横に並んでいて、社長が迷惑をかけたと一家を一泊で招待してくれたようだ。 「あの、助けて頂き有難うございました」 「いえ、舞い戻る事になって大変だったでしょうが、度胸も計りしれない素質もあり奴は喜んでるでしょう。良かったらご一緒しませんか?」 息子さんは大人しいのか優しい顔で微笑んでいるだけだったが、この親子ならキツネみたいに害は無いとついて行く事にした。 「待って、俺達も混ぜて!」 後ろから滋さんとリーダーの姿が見えると、私達は思わず顔を歪め、正直コイツらといるとロクな事がないのでプライベートまで関わりたくない。 「あんた達は人間の所に入ればいいでしょう、犬はいないんだから」 「俺は同じチーム繋がりで関係はある」 「そんな事言うんだったら、俺はイナリと同じ職場で、しつけもしたから更に関わりがある」 秋月さん達も言葉を失い風呂場に向かうと、満足そうな顔をする滋さんと、やや緊張した表情のリーダーが後をついて来た。 脱衣場を案内してもらい女性ロッカーで着替えを済ませると、違う意味でドキドキしていた。 「瑠里、考えたら水着姿になった事ないかも」 私の水着は黒のセパレートの小さなドット模様で、胸元にはフリルがあり下にはスカートもあるが、鏡を見ると結構大胆な格好に見えた。
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