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「邪魔者が一人消えたからのんびり入れるね、立花の人間には色んな目に合わされたから基本的には好かん」
「私も殴りたいと思ってる人が最低二人います」
「百合さんとは気が合いそうだ」
滋さんはああ言って出たが凱は見た目は恐ろしいけど、危害を加えるつもりは無い気がする。
もしそうならイナリを山に帰した日と、今日で二回も殺されてもおかしくない場面に遭遇している。
一回目の時は田村さん達も駆けつけてくれ「気まぐれで殺そうと変わるかもしれない」と社長は言っていた。
でもお礼としてお守りをくれイナリの意見を尊重し、こちらで暮らす事を許可した張本人だ。
「凱は敵に回ると脅威な存在だが強くて自分が興味を示す者には、ついて行く気まぐれな所がある。仲間意識は尋常じゃないし、ルールをきっちり守るようになってから変わったんだよ」
「昔の話は……怖いのでしなくてもいいですよ」
「ふふっそうですね、こちらでの暮らしが長くなったので立花が知らない事も色々耳に入りますが、ただ……」
肩にお湯を掛けて寛いだ秋月さんはスッと近づくと、今の仕事を続けると犬螺眼は出てくる事が多くなると思いますと囁いた。
『えっ』と少し固まったが、犬螺眼はイザリ眼を持つ者が使うのは最低条件で、山金犬に認められないと使えないらしい。
「人に懐かないので与えられるのも難しい事ですし、おまけに使う人を選びますので、強くないと何の反応も示しません」
小声なので少し寄ると、イザリ屋にいる以上必ず強くなっていくし、なるしかないので犬螺眼が出る可能性が高いと言われると納得も出来た。
そう言えば凱もそんな事を言ってたような、でも記憶が曖昧でハッキリとはしない。
「普段の生活に支障はないんでしょうか?」
「イザリ屋を辞めたらというより、弱くなれば自然に消えて行きますし、なんの心配もありません」
それを聞いてホッとしたが、それにしても凱が話をするなんてよっぽど気に入られたんでしょうと言われたが、苦笑いで誤魔化しておいた。
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