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凱に会っていないので私よりも用心が薄かったみたいだが、もしかしたら今後変なパワーが使えるようになるのかもと、不安になってくる。
「まぁ使えるもんは利用した方が得なんで、楽しみにして持ち歩くようにします」
堂々とした声に皆薄っすらと苦笑いを浮かべていたが、雑談が始まり出すと待望のワンパスタが運ばれ、ミートソースとチーズの香りで既に虜になりそうだ。
一口食べると濃厚だけど食べやすい味付け、いつもチーズを沢山かけるがこのパスタはもう入れてあるし、ミルクっぽいけど加工された何とも言えない旨みでフォークの勢いが止まらない。
「おいひ――っ!ソースもチーズも美味しすぎる!」
「こっちも最高だよ!一口食べとけば?」
カルボナーラも勧められたが、私はワンパスタ一筋で浮気をするつもりもなく、呆れた顔をする妹達を気にせず食べ続けた。
「百合さん、こっちに嫁にくればいつでも食べれるよ?」
照ちゃんにそう言われると数秒考えたが、ダメだと皆の声が揃う。
「一家ごとでも全然構わんよ?」
「変な事言わんで貰いたい!百合さん、パスタ美味しい店は他にも知ってるからね~」
社長は被せるように取り繕ったが、瑠里は『一家』というキーワードですんなりと黙って食べ始めていて、特に抵抗するつもりもないようだ。
「百合ちゃん、お母さんは今の場所で暮らしたい筈だよ?おばあちゃん宅で野菜も育ててるでしょ」
滋さんの冷静な発言は一番心に響いたが、ドラム缶の事を一瞬忘れる位の美味しさだったのだ。
「ねっ?俺もパスタ屋は知ってるし、今度連れて行ってあげる」
「そうやって姉妹手懐けて金刺繍に誘わないでよ?瑠里ちゃんは赤刺繍で、百合ちゃんにも来て欲しいんだから」
八雲さんがそう言うとリーダーも黙ってはおらず、二人はウチのチームなんだよと揉め出している。
パスタを食べ終わりすっかり満足していると、木村さんが食後にカプチーノを頼んでくれた。
「こんな騒がしい奴らより、こっちの方が大人だし静かに暮らせるよ」
「息子の嫁じゃないんかい!」
妹が即ツッコミを入れると、瑠里ちゃんいいタイミングだねと微笑んでいる。
冗談だと付け加えていたが、和音さんの意見を無視して勝手に話を進める辺りは、社長と何となく似ている気がした。
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