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ディナーショー
イザリ屋に勤務してから九ヵ月が経とうとし、休日は職場でトレーニングをしたり、通信制の高校のレポートの提出に励んでいた。
月の勤務が少ないので掛け持ちが出来るまでに落ち着き、パネル操作も覚えトレーニングはもっぱら瑠里と二人が多かった。
以前は社長やリーダー達のお世話になっていたが、姉妹でのトレーニングは色んなアイデアを出しながら動く事が出来た。
他人に遠慮もなく自分のペースで技を試したり、意見を出しながら相談する事も出来ていた。
元々極貧生活だった私達は勿体ない視点で、新しい技を見つけ出そうと試行錯誤していた。
「それだと無駄にエネルギー使ってるから、電気代だとしたらかなり浪費するよ」
「じゃあ瑠里もさ、防御の壁が分厚くて大きいからそこを攻撃にシェアすれば?」
とこんな具合だ。
休みの日のトレーニングもシャワーと着替えが済むと、木村さんに制服や道具を返却して帰る。
任務の時と対して変わらない行動だが、木村さんのドラム缶体型を見ると、ウチの母に声を掛けられてるようで何故かホッとしてしまう。
今日も受付に制服を返しに行こうとすると、珍しくキツネ面……いや、社長と何やら話している姿が見えた。
『げっ、キツネがいる!』
イザリ屋に入った頃から社長にはよく遊びと称してトレーニングされ、おかげで腕は上達したが、いつも怖い目に合い姿を見るだけで未だにビクッとする。
他のメンバーからすれば羨ましいみたいだが、キツネのように目が細くて笑っているようにみえるが死神に思えた事が何度もあった。
「いやあ百合さん、瑠里さんトレーニングご苦労様です。二人とも熱心で褒めていた所ですよ」
「お疲れ様です、有難うございますじゃっ、私達はこれで」
「ちょっ、ちょい待ちなさいな。そんなつれない態度はないでしょーよ、サプライズプレゼントもあるんですよ」
そんな手には乗りませんと澄ましていたが、妹の瑠里はピタッと足が止まり、話ぐらいなら聞いてもいいだろうという表情をしていた。
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