プロローグ

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「ひまわりが咲く頃に」出会ったあなた。  名前も知らないあなた。顔もはっきりとは思い出せないけれど。  今はもう遠い記憶の中、薄くぼやけた夢の中でしか会えないあなた。  もう一度会えたなら、今度はちゃんとお礼を言いたい。  あなたが私の世界を変えてくれた。私の世界に新しい風を運んでくれた。  どうか、もう一度あなたに会えますように。  とても静かで、ひんやりとした空気に包まれる。遠くで「ピッ」という電子音や人の声が小さく聞こえる。大きな窓の外にはひまわりの花壇が見える。競い合う様にグングンと伸びたひまわりたちが大きな花を咲かせている。  あぁ、図書館だ。真琴が意識を棚の前に向ける。棚の前には黄色いTシャツを来た中学生の私がいる。必死で本を探している私。いつの間にかその背後には白いポロシャツを来た男の子が立っている。男の子が差し出してきた本にビックリする私。本を渡して、しばらくすると男の子は去って行く。待って。あなたの名前は?あなたの顔をもう一度確かめたいの。だけど、そう真琴が強く思えば思うほど、男の子は遠くに行ってしまう。本を受け取った私はそのまま男の子から離れてしまう。  待って。男の子にもう一度ちゃんとお礼を言ってほしいの。お願い。
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