第1章 犯人は金色の招き猫

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「状況を説明してくれるか・・・」と探玄が蓮澄に言う。 「はい、先輩・・・」と蓮澄は胸のポケットから警察手帳を取り出して話し始める。 「事件があったのは三日前の10月31日。亡くなったのはこの部屋に住む川崎真琴さん、22歳、アルバイト店員です。死因は青酸カリによる中毒死。自殺か他殺かはまだ、判然としていません」 「第一発見者は?」と探玄が現場の状況を確かめながら尋ねる。 「第一発見者は川崎さんの彼氏と言う男。横浜に住む45歳の会社員、大久保正道。いつも彼女にモーニングコールをしているのに、数日前から電話にもSNSにも返事が無かったので、不審に思って部屋に来たら、全てに鍵が掛かっていたそうです。ただ、玄関上の電気メーターが異常な回転をしていたので、管理人に言って部屋を開けてもらったところ、川崎さんの遺体を発見したそうです」 「ふぅん・・・。彼氏・・・、大久保さんはここの合鍵を持っていないの?彼氏でしょう?」 「持っていないそうです。実は・・・、彼氏と言うのもちょっと眉唾物で・・・」 「はぁ?どういうわけだ?」 「その・・・、大久保自身が自分は彼氏と思っていたようで、彼女は大久保を単なる友達としか思っていなかったそうです・・・」 「それは、確かなのか?」と探玄が蓮澄の方へ向き直って聞く。 「はい。川崎さんの友人関係に聞くと、かなり年上の友人がいるとは話してはいますが、彼氏とは違うとも話しているようです」と蓮澄が手帳を閉じながら説明をした。 「なら・・・。その大久保が容疑者じゃないのか?交際関係のもつれから手にかけた可能性だってあるだろう?」 「はい・・・。自分もちょっと、そう疑ったのでアリバイを確認したところ、彼、同じ市内の病院の事務当直していたそうで・・・。一応、念の為に防犯カメラを確認させていただいたところ、彼、カメラに映っていない時がありますが、病院の全ての出口から出て行った映像は無かったんです」 「防犯カメラの映像って・・・。どこかに死角があるだろう?それに紛れて・・・」 「それも考えて確認しました。それと、ちょうど病院の面会時間終了で戸締りをする姿が映った後、夕食を摂ってから仮眠されたそうで・・・」
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