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そう探玄は呟くと、テーブルの周りに視線を送る。
「彼女・・・。寒がりだと言っていたな・・・」
「はい。それが何か?」と蓮澄が近くに寄りながら尋ねる。
探玄は立ち上がりながら部屋の中を見回して見た。
「この部屋・・・、築20年は越えている感じの1DKのアパートだよな。隙間風とか当然ありそうな雰囲気はあるが、寒いとまではいかないだろう・・・」
「はぁ・・・」
「事件当日の気温を調べてくれ」
「はい・・・?あっ、わかりました」と蓮澄は部下の刑事に顎で指示を出した。
「それと・・・。このテーブル、こたつらしいが・・・、コタツ布団が掛かっていない・・・」
「えっ?・・・あっ、本当だ・・・。電源コードが着いていないから気づかなかった・・・」
探玄は部屋のクローゼットを開く。中には衣装ケースが三段重なっている上に、丁寧に圧縮袋に入れられたコタツ布団が置かれている。
「コタツ布団が無い訳じゃないな・・・。ここにちゃんと置かれているから・・・。丁寧に圧縮袋に入って・・・」
探玄の後ろから蓮澄が覗くようにして確認する。
「たしかに・・・。でも、どうしてですか?」
「女性が寒がりだというのはわかる。とくに冷えるのが足元だというじゃないか。なのに!彼女はコタツがあるのにコタツを使わずに電気ストーブを使っていた・・・。これっておかしく無いか?」
蓮澄は後ろに置かれているコタツに視線を送ってから、「たしかに・・・。そう言われると妙ですね・・・。あっ、でも。コタツ布団を出すより電気ストーブを出す方が簡単だったとか。寒くなってきたから電気ストーブを使って洗濯物を乾かしていたとか・・・」と蓮澄は言う。
「それは考えられない・・・。彼女、一人暮らしだろ。たぶん、洗濯物は外に干しているだろうし、仮に部屋干しでも窓際に掛けている。今の時期、たぶん、まだ電気ストーブは使っていないさ。それに、寒がりな女性が身体を温めるだけに、洗濯物を乾かす為だけに電気ストーブを点ける事に違和感を感じる・・・。死亡推定時刻は?」
「あっ、はい・・・。えぇーと、10月28日の午後20時から23時です・・・」
「なるほど・・・」と探玄は囁きながら、右手を自分の顎下に当てて、妄想の世界へと旅出した。
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