第1章 犯人は金色の招き猫

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 そう探玄は呟くと、テーブルの周りに視線を送る。 「彼女・・・。寒がりだと言っていたな・・・」 「はい。それが何か?」と蓮澄が近くに寄りながら尋ねる。  探玄は立ち上がりながら部屋の中を見回して見た。 「この部屋・・・、築20年は越えている感じの1DKのアパートだよな。隙間風とか当然ありそうな雰囲気はあるが、寒いとまではいかないだろう・・・」 「はぁ・・・」 「事件当日の気温を調べてくれ」 「はい・・・?あっ、わかりました」と蓮澄は部下の刑事に顎で指示を出した。 「それと・・・。このテーブル、こたつらしいが・・・、コタツ布団が掛かっていない・・・」 「えっ?・・・あっ、本当だ・・・。電源コードが着いていないから気づかなかった・・・」  探玄は部屋のクローゼットを開く。中には衣装ケースが三段重なっている上に、丁寧に圧縮袋に入れられたコタツ布団が置かれている。 「コタツ布団が無い訳じゃないな・・・。ここにちゃんと置かれているから・・・。丁寧に圧縮袋に入って・・・」  探玄の後ろから蓮澄が覗くようにして確認する。 「たしかに・・・。でも、どうしてですか?」 「女性が寒がりだというのはわかる。とくに冷えるのが足元だというじゃないか。なのに!彼女はコタツがあるのにコタツを使わずに電気ストーブを使っていた・・・。これっておかしく無いか?」  蓮澄は後ろに置かれているコタツに視線を送ってから、「たしかに・・・。そう言われると妙ですね・・・。あっ、でも。コタツ布団を出すより電気ストーブを出す方が簡単だったとか。寒くなってきたから電気ストーブを使って洗濯物を乾かしていたとか・・・」と蓮澄は言う。 「それは考えられない・・・。彼女、一人暮らしだろ。たぶん、洗濯物は外に干しているだろうし、仮に部屋干しでも窓際に掛けている。今の時期、たぶん、まだ電気ストーブは使っていないさ。それに、寒がりな女性が身体を温めるだけに、洗濯物を乾かす為だけに電気ストーブを点ける事に違和感を感じる・・・。死亡推定時刻は?」 「あっ、はい・・・。えぇーと、10月28日の午後20時から23時です・・・」 「なるほど・・・」と探玄は囁きながら、右手を自分の顎下に当てて、妄想の世界へと旅出した。
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