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「じゃあ、一緒に帰ろう」
「うん」
子供のように大きく頷く洋のことがとても愛しい。この人は、どこまで私を夢中にさせるつもりなのだろう。
「結局いつも見せつけられて終わるんですよね」
久呂武さんは半ば呆れたように私達を見ていた。視線を感じて振り返れば、テーブル席にいた2人の男性がこちらを見ていて、目が合った瞬間「若いってのはいいねぇ」と言われた。
私は急に恥ずかしくなり、洋の服を握る手に力が入った。
「自分で言ったくせに、何赤くなってるのさ」
洋は、私が掴んでいない方の人差し指で私の左頬をつついた。ひんやりとした手に驚いて、いつからこんなに冷えてしまっていたのだろうかと思う。
私は久呂武さんの淹れてくれたカプチーノを飲んで体を温め、洋の事が好きだと熱を入れて話したからか、体中が暑いくらいぽかぽかしている。
けれど洋は、車のエンジンが暖まるより先にここへ着き、走ってここへ入ってきたものの、体を暖める暇もなかったのだとようやく気付く。
「赤くなってない」
そう意地を張りながら、久呂武さんの見えないカウンターの下で、洋の手をそっと握った。ぴくりと動いたその指は、すぐに私の手を握り返した。いつもは私よりも暖かいはずのその冷たい手が私の熱を奪っていくのを何だか嬉しいと感じた。
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