最終章

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「あのね、本当は洋に相談しようと思ってたんだけど、たくさん勉強も教えてもらったし、凛には無理だって言われそうで怖くて言えなかった……」 「無理って……何の専門学校なの?」 「……看護師」 「看護師!?」 専門学校を受けたことよりも更に意外だったのか、洋は少し大きな声で復唱した。 「うん……蘭さんには相談してて、受験の段取りとかしてもらったの」 「何でまた、看護師になんか……」 普段一緒に働いている看護師を想像しているのか、その道を選ぶ事に理解できずにいるようで、洋は複雑そうな表情を浮かべていた。 私は、祖父が入院している時のエピソードを話して聞かせ、東大に進学したところでやりたいことをこれから探さなければいけないこと、理科ではなく文化で受けること、専門学校に合格したら、東大が合格しても辞退しようとしていることを伝えた。 もちろんスラスラ言葉が出てくるなんてことはなくて、時々洋から質問されてはそれに答えた。 「そう……」 「怒らないの?」 「怒る? いや、怒りはしないけど……驚きはするよね」 「そうだよね……黙っててごめん……」 「……まあ、蘭には相談してたって言うから、1人で突っ走ったわけじゃないならいいけど……」 納得はしてくれているようにも見えるが、それでもまだ私の言った事が信じられないようで、口元に手をあて、瞬きもせずに一点を見つめている。
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