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「ごめんね……せっかく勉強教えてくれたのに」
「何で謝るの? 勉強する習慣をつけるための練習だと思えばいいじゃん。専門学校を下に見る訳じゃないけど、中々いないと思うよ。東大蹴って専門に進学するやつなんて」
洋はそう言ってクスクスと笑った。私には無理だって言われなかったことが嬉しかった。私も社会に出て働くことの権利を手に入れられたような気がした。国民の義務として労働の義務はあるのだけれど、そういうんじゃないのよ。なんていうか……居場所みたいなもの。
「でも、受かるかどうかはまだ……」
「きっと受かるよ。ちゃんと学校に入りたいって伝えてきたんでしょ?」
「それはもちろん!」
「じゃあ、大丈夫。看護学校入ったら、俺と仲間だね。その時は、歓迎するよ。医療チームの一員として」
そう言って私の頭にぽんと手が置かれた。その瞬間、白衣姿の洋と重なって彼氏としてではなく、医師としての洋が見えた気がした。
「ありがとう……嬉しい」
「俺も、医療の事について理解が深まるのは嬉しいかな。あ……でもそうなると、就職ってどこになるの?」
「蘭さんが講義に行ってる専門学校だから、そこの実習病院になると思うけど……」
何かを思い付いたかのように、就職先を気にする洋が、何だかそわそわしていてこちらも落ち着かない。
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