最終章

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「そうか、そうだよね……。総合病院だね……」 「うん……何かあるの?」 「脳神経内科と呼吸器外科だけは勤めちゃだめだからね!」 「え……? 脳?」 「あと、内分泌もだ……」 「ないぶんぴつ?」 脳と呼吸という言葉は聞き取れたけれど、内科だとか外科だとか、挙げ句ないぶんぴつという聞いたことのない言葉が出てきて、何が何だかわからなくなる。 「あそこの医者は手癖が悪いのが揃ってるから、俺心配だよ」 「……そういうこと」 「結婚してても平気で口説くようなやつらばっかだからね。だから医者は嫌なんだよ」 そう言ってイライラしている洋も医者じゃないとは、口が裂けても言えない雰囲気を醸し出している。 「だ、大丈夫だよ……」 「馴れ馴れしいやつがいたら、ちゃんと名前控えておいて、後で俺に教えて。何とかするから」 洋が言う何とかは怖くて想像もしたくない。何をするつもりなのだろう。医師生命に関わらなければいいけれど……。 「そんなの、就職してからでも……」 「それじゃ遅いんだって。看護学生って病院に実習に行くんだから、そこにだって医者はいるんだよ」 「いやいや、医者って皆忙しいでしょ」 「忙しいし、もちろん看護学生が来る度に邪な感情を抱いてるわけじゃないけど、凛が実習にくるとなったら話は変わるでしょ。凛はその辺の女の子とは比べものにならないくらい、可愛いんだから」 熱烈に説明してくれる洋が可愛いと言ってくれるのは嬉しいのだけれど、世界中の女の子を敵に回しそうなフレーズが頭に残る。
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