最終章

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1ヶ月なんて期間はあっという間だった。勉強を始めて9ヶ月後にはセンター試験なんて言っていた日々が懐かしいほどだ。 まさか自分が東大を受ける事になるなんて思ってもみなかった。私には縁のない大学だと思っていたから。 東大の試験を受験する前に、専門学校の合格通知が届いたため、飛び上がるほど嬉しいというよりかは安堵の方が大きく、これでもう進路が決まったと思えば、東大の試験も平常心で受けることができた。 きっとあの中で私が一番冷静だったのではないかと思う。だって私は、受かっても落ちてももう進路は決まっているのだから、どうしても受からなきゃならない理由はなくなったのだ。 試験会場では、私の両隣でピリピリとした空気が張りつめていて、今日のために余程勉強していたのだろうなと感じた。 その事を洋と蘭さんに伝えると、2人もほっとしたように柔らかい表情をした。専門学校の合格がわかってからは、今まで以上に私の看護師への道を応援してくれている。 あと2ヶ月もすれば学校に通い始めるだなんて信じられなかった。私が学生で洋は働いてという生活はどんなものだろう。時間も合わなくて、会える日が少なくなってしまうのだろうか。「凛、忘れてないよね? 学校合格したんだから、4月からは一緒に住むんだよ」 ほんの少し愁いを帯びた表情をすれば、洋はそう言って意地悪そうに笑った。
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