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一式翁の独語は続く。
陽光が還らない事など理屈では分かっている。
自分の言葉が如何に自然の摂理に反するものなのかも十分に承知している。
しかし一式翁は尚も…
やがてその口は、行き場のない怒りそして無念さの余り、虚ろな口調にてとんでもない事を口走り始めるに至った。
「…知ってるかいニィニィ。
スミソニアンにあるエノラ=ゲイは、手荒く厳重に監視されているんだ。
ノーズギア(前部主脚)をTNTで吹き飛ばしてやるってのはどうだい?
日本中を焼け野原にしやがったんだ。
そのくらいはやっても許され…」
「目ぇ覚まさんかいボケ!」
一式翁の言葉を遮ると同時にその後ろ頭を二割張り手で叩きつつ、声をかけてきたのが誰なのかは言うまでもないだろう。
一式翁から陽光の訃報を聞かされるや、親友は伊丹空港から飛行機に飛び乗り沖縄にかけつけてくれたのだ。
「嵐さん…」
「確かにワイもあの銀の化け物は好かん。
せやかてな陸、普段飛行機自体に罪はないて言うとうのは自分やんか。
忘れたとは言わさへんで。
…辛いんはワイかておんなじやあほ」
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