ナヤミゴト。

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 人の口に戸は立てられぬ。 その諺が示すとおり、陽光の大往生を知るのは身内と嵐陸コンビだけではない。 市役所の同僚がこっそり教えたのだろう。 帰宅し留守電を聞いたカズトは、ネギを背負った鴨でも見つけたかのようにほくそ笑むのであった。 陽光と悟そして一式翁はほぼ同年代。 まだ動ける内に一度位は、老い先短い年寄りをいたわってやってほしい… と陸攻にねじ込めば、お人好しな弟の事だから嫌とは言えまい …という胸算用を弾きつつ。 「それにはまず、あの屑嫁をクズから引き離さないとな… よし、大吉を上手く言いくるめられれば…」 部屋に独りきりなのを幸いにカズト。 やがてその手は携帯を掴み、何処かへと電話をかけ始めるのであった。
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