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一式大吉が父カズトからの電話を受け取ったのは、職場の同僚である通称マナちゃんと八神バーにて寛いでいた時である。
大吉の手元に黒革の手帳がある事から、八神バー名物トロピカル盛りを食べに来ただけが来店の目的ではない事が窺える。
やがて大吉が電話を切ると、マナちゃんが身を乗り出しつつ口を開いた。
「誰から?」
「親父だよ。
たまにはくるみちゃん…」
そこまで口にするや不意に言葉を途切れさせる大吉。
いつもニコニコしているマナちゃんが、所謂ジト目で大吉を睨み始めたのだ。
「誰その子…」
更にジト目でマナちゃん。
この事から大吉とマナちゃんが、言うだけ野暮な関係であることが窺える。
「陸叔父さんの奥さん。
つまり叔母さんだよ。
歳が近いから普段はくるみちゃんて呼ぶけどね」
「…大ちゃんの意地悪」
ホッとしつつ苦笑しながらマナちゃん。
やがてマナちゃんの脳裏に、大吉と一緒にスアやん号に行く度にグリーンカレーの缶詰をお裾分けしてくれる、気立ての良いメイドさんの姿が浮かぶのであった。
「陸叔父さんの奥さんね…
陸攻堂がメイド喫茶始めたのかと思ってたわ」
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