冷たい熱

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「せんせ、……っ!」  頭を抑え込まれたまま、綾瀬の唇に瀬戸の唇が重なった。  言葉を失くした綾瀬から切ない口付けを放すと、目を細めて微笑んでいる。 「僕、君の事が好きなんだよね。綾瀬の事が好きなんだ」  青白い顔がさらに妖艶に映し出される。  一気に血の気が引いていくのが判った。  綾瀬が好きなのは長田だ。親友だけど、綾瀬は特別な気持ちを持っていた。  そして、その長田は、瀬戸のことが好きなことも知っていた。だから、この思いを告げることが出来ず、胸の奥にしまい込んだばかりだったのに。 「先生、冗談やめてください。それに、僕は好きな人がいるんです」  この場をしのごうと、誰にも、もちろん長田にも言った事がない秘密を打ち明けた。 「知ってるよ。君が好きなのは長田だろ。長田が僕に対して特別な目で見ていることも知っている」  哀し気な瞳で、淡々と答える瀬戸の表情が意地悪く微笑んで見えた。  だったらどうして……。 「どうしてって顔してるね。だってさ、長田を見ている君があまりに可哀想で。それに、そんな目で長田を見ている君が憎くてさっ」  ぐっと押し倒され、両手首を包帯で縛られた。そのままベッドの縁に固定している。  何をされるのか、大体予想が付いたが考えたくもない。 「い、痛いっ」  クスクスと部屋に先生の嬉しそうな声が響き、誰もいない学校で瀬戸と二人でいる方が独りでいるよりも怖いと思った。  首筋を這うように頬を寄せ、柔らかく湿った唇が音を立てている。
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