あのひと

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それでもあきらめられないの。 あのひとと初めてあった時の、たった一言が。 「十年たったら、また会おうね。」 そう言って私の手を握りしめてた、あのひと。 額をコツンと当てて、そっと頬を撫でて少しだけ潤んだ瞳を揺らしたあのひとを。 いかないで。とすがりつきたかったのに。離された指先が躊躇うように、揺れるのを私はただ見ているしかなかった。 夢で何度も見るの。 あれは、私の欲望が見せる願望なのかもしれない。でも、繰り返し、繰り返し何度も見る夢が、嘘だと分からなくなってくる。 あの人の声も、眼差しも、優しい手のひらの柔らかさも、全部覚えてる。私の体が。 だから、目を閉じて繰り返し辿るの。
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