0人が本棚に入れています
本棚に追加
それでもあきらめられないの。
あのひとと初めてあった時の、たった一言が。
「十年たったら、また会おうね。」
そう言って私の手を握りしめてた、あのひと。
額をコツンと当てて、そっと頬を撫でて少しだけ潤んだ瞳を揺らしたあのひとを。
いかないで。とすがりつきたかったのに。離された指先が躊躇うように、揺れるのを私はただ見ているしかなかった。
夢で何度も見るの。
あれは、私の欲望が見せる願望なのかもしれない。でも、繰り返し、繰り返し何度も見る夢が、嘘だと分からなくなってくる。
あの人の声も、眼差しも、優しい手のひらの柔らかさも、全部覚えてる。私の体が。
だから、目を閉じて繰り返し辿るの。
最初のコメントを投稿しよう!