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第1章 衝動
BCBトールの話~first crush~
<わからない>
ーエレベーターのドアが開くー
そのドアから彼女が入ってきて
俺に気付いて、頬をあかく染める。
俺はエレベーターの奥の壁に、怠そうにもたれかかったまま。
彼女は、明るく軽やかな声で言う。
「こんにちは!」
彼女は、人懐っこい顔でクシャっと笑う。
そんな笑顔とは裏腹に…彼女はエレベーターの入り口に立っていて。
奥にいる俺と…彼女の距離。
エレベーターの中…ふたりきり。
…遠いふたりきり。
なんてことない…こんな距離。
なんてことないのに。
なのに…“遠い”と感じている俺は。
なんなんだ。
ーーーーーーーーーーーー
<衝動>
俺は6階のトレーニングルームに向かうため、このエレベーターに乗っていた。
彼女は3階のボタンを押していた。
エレベーターはあっという間に3階に着き、彼女が俺に会釈をして降りていく。
あっさりと降りていく。
俺は…
「「わぁぁあ!????」」
彼女はヨロけながら、俺の胸に倒れこむ。
彼女は、俺に腕を掴まれたまま 固まっている。
そりゃそうだ。突然、背後から腕を引っ張られて…エレベーターの中に引き戻されてしまったから…ね。
それに、俺とこんな密着。
(あぁ、“パニック”って顔してる)そんな事を冷静に考えている俺。
「大丈夫?」自分が やったくせに、そんな事を真顔で聞く俺。
「は…は、はい。」そう言って、またクシャっと笑った。
彼女から香る…花のような…洗濯物のような…ほわほわした匂いと。
彼女との距離が縮まり、何か満たされたような…そんな感覚。
勝手に動いて、勝手に1人で満足する俺。
突然 巻き込まれたのに、なぜか嬉しそうな彼女。
結局6階で俺が降りて、彼女は そのままエレベーターで3階へ降りて行った。
それだけの出来事。
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