~再会~

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『こんな人殺しと一緒に居ちゃいけない。少なくとも、この半年は一人で生きて来られただろう。亜季はもう大丈夫……大丈夫だよ』 「大丈夫じゃないよ! この半年間だって、柊が帰って来るって信じてたから耐えられたのに! お父さんもお母さんもこんな事望んでなんかない! 二人が望んだのはきっと、柊の幸せだったはずだよ! それに……私とも約束したよね?」  それは、幼い頃に交わした、ごくありふれた小さな小さな約束。 「私の事、お嫁さんにしてくれるって」   亜季には、銀狼が少しだけ驚いた顔をしているように見えた。 『そんな昔の……いつ破られても可笑しくない、子供の頃の他愛のない約束だろう。こんな化け物の事はもう忘れてくれ。初めから叶わぬ夢だったんだよ、そんなものは』 「どうして? 小さい頃の約束じゃダメ? 私知ってた、柊とは血が繋がってないって。だから、いつか本当にお嫁さんにして欲しいって 、そう思ってた。その姿を見た今だって、この気持ちは変わらないのに」  柊の声が、亜季の脳内に優しく切なく、そして静かに響き渡る。 『ありがとう……君は最後に、僕をこれ以上ない程幸せな気持ちにさせてくれた。もう……充分だ』  バン――ッ!!  突然部屋の窓が勢いよく開いた。  外の風雪が部屋の中に侵入して来て、銀狼と亜季との間に冷たい壁を作った。 「やだ! 柊、待って! 行かないで!」 『愛してるよ、亜季。初めて出会ってからずっと……君は僕の宝物だった。だからどうか、誰よりも幸せになって欲しい――』  そう言うと、銀狼はさっと窓の外の猛吹雪の中へと身を投じ、その姿はあっという間に見えなくなった。 「だめ……柊……行かないでよ、お願い」  もう、何を言っても柊には届かない。  亜季は、力無くその場に泣き崩れた。
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