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「ねぇ、奏。
冗談だよね? 俺、今一言も口説いてないよ。
口説くつもりなら、もっと甘く耳触りの良い言葉だけを選んで囁くよ。それが欲しかったらいくらでも与えてあげるけど?
そもそも、あんまり他の女性との継続した性的接触には興味ないんだ。その場限りの慰めは、まあ悪くないけど、終わった途端に冷めていくだけだし――ね。色々面倒くさいことの方が多いし」
さらっと言われると、なんて返せば良いのかわからなくなる。
蓮登は奏をベッドに押し倒し、シャツのボタンを外しながら上から覗きこんだ。
「俺が愛しているのは、奏、君だけだ。
こんなに、壊したくなるのも、虐めたくなるのも、哭かせたくなるのも――」
今にも泣きそうな思いつめたような眼差しから、嘘の色を読み取るこ となんて出来ない。
そもそも、彼は一言も騙そうとなんてしていない。
甘い顔と優しい声であることに間違いはないが、本来隠すべき本音がダダ漏れしているのは明らかだ。
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