ハジメテの夜

11/22
前へ
/22ページ
次へ
「ねぇ、奏。  冗談だよね? 俺、今一言も口説いてないよ。  口説くつもりなら、もっと甘く耳触りの良い言葉だけを選んで囁くよ。それが欲しかったらいくらでも与えてあげるけど?  そもそも、あんまり他の女性との継続した性的接触には興味ないんだ。その場限りの慰めは、まあ悪くないけど、終わった途端に冷めていくだけだし――ね。色々面倒くさいことの方が多いし」 さらっと言われると、なんて返せば良いのかわからなくなる。 蓮登は奏をベッドに押し倒し、シャツのボタンを外しながら上から覗きこんだ。 「俺が愛しているのは、奏、君だけだ。  こんなに、壊したくなるのも、虐めたくなるのも、哭かせたくなるのも――」 今にも泣きそうな思いつめたような眼差しから、嘘の色を読み取るこ となんて出来ない。 そもそも、彼は一言も騙そうとなんてしていない。 甘い顔と優しい声であることに間違いはないが、本来隠すべき本音がダダ漏れしているのは明らかだ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

152人が本棚に入れています
本棚に追加