ハジメテの夜

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「蓮登、何かいいことあった?」 そう聞かれるのは何度目だろうか。 蓮登はゆっくり瞳を細めて、口角を程よく引き上げると目の前の客である彼女を見つめる。 「もちろん、今貴女とここでこうして出会えているからですよ、静香様」 「そんなこといって、アフターに誘うとすぐに拒絶する癖に」 一瞬うっとりしかけた静香は我に返って楽しそうに笑う。茶色く長い髪を、指輪で飾った右手で弄びながら。 都内で宝石店を開いている静香には家庭がある。 けれども、主人は仕事で忙しくいつも飛び回っているのだ。その淋しさを埋めるために、時間を見つけてはここ、Honey Beatへと足を運んでいた。 「だって、今の関係を少しでも長く楽しみたいじゃないですか。  身体だけの関係になったら早々に飽きちゃうかもしれませんよ?」 「あっれ、蓮登って意外とそっちの方ダメなワケ?  まさか……ね?」 「ご想像にお任せします」 蓮登は言うと、静香の手に恭しく唇を落とした。
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