<5月> ヤサ男 腹を括る

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「ちょっとあんたたち……なにじゃれてんの?」  ぱっと離れたよし兄を見て笑がこみあげて噴きだす。いつからいたんだよ、姉ちゃん。 話に夢中で気が付かなかった。 「サト。孫は私が産むから、あんたは何も心配しなくていいから」 「は?」 「脱『恋愛欠陥人間』 足掻いてみなさいよ、初恋は実らないっていうのはね、子供の時にするから実らないの。 自分の生活を自分で作っている今だからこそ実らせることができるって思わない?」 「なんだよ、俺なにも言ってないし。いきなりそんなこと言われても……」 「恋愛で悩んでいるのは予測済。 女のことなら私に聞きなさいって話だけど、由樹に聞いている時点で私なりに察してるわけ。情けない顔じゃなくなったのはいい兆候ね」 「サトをドロドロに甘やかして泣かせてすっきりさせたかったのにな~」 「よし兄……それ怖いって」 「サト?」 「ん?」 「実らせた私本人が言うんだから、頑張りなさい」  そう言って微笑んだ姉ちゃんの肩をそっとよし兄が抱き寄せた。 飯塚の顔がみたいな。並ぶ二人の姿を見てそんなことを思う。  アイツがやりたいことができるように、それを実現できる環境を俺が作ればいい。それが現実になったときに「好き」だと言おう。  俺はそう決心した。
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